障がい者の採用方法とは?定着までのポイントを解説

コラム|企業様向け

2026/10/14

 

障がい者採用を成功させるには、採用活動だけでなく、業務設計や合理的配慮、定着支援までを一体的に考えることが欠かせません。この記事では、企業側の障がい者採用の基本から、採用の流れや定着支援までを体系的に解説します。



【この記事の目次】

障がい者の採用方法|流れと定着支援を解説


採用活動を進める企業にとって大切なのは、法定雇用率を満たすことだけではなく、業務の整理、必要な配慮の明確化、採用後の定着支援までを一体で設計することです。厚生労働省は、企業に対して法定雇用率の達成を求めるとともに、職業紹介、職業訓練、職場適応援助、助成制度などを通じて障害者雇用を総合的に推進しています。2025年6月1日時点の集計では、民間企業の雇用障害者数は70万4,610人、実雇用率は2.41%で、いずれも高い水準にあります。


障がい者採用では「採ること」よりも「働き続けられること」の設計が成果を左右しやすいからです。厚生労働省は、雇用分野における障害者差別の禁止と合理的配慮の提供義務を示しており、募集、採用、配置、雇用管理の各段階で適切な対応が求められています。つまり、採用実務は法令対応と職場づくりの実務でもあります。


この記事では、企業側の採用活動に関する基本的な考え方、求人票の作成や面接の進め方、支援機関との連携、定着のための職場づくりまでを体系的に整理します。これから障がい者採用を始める企業にも、すでに取り組んでいるものの定着に課題を感じている企業にも、実務の判断材料として役立つ内容です。なお、個別の症状や就労可否の判断は一律ではありません。最終的な診断・治療・支援方針は、医師や専門機関にご相談ください。


障がい者の採用とは?企業が知るべき基本と課題


障がい者の採用とは?企業が知るべき基本と課題を説明するイメージ画像


障害者雇用の現状と背景


障がい者雇用は、近年ますます重要性が高まっています。背景には、法定雇用率の引上げ、働き方の多様化、人材不足への対応、そして企業の社会的責任に対する意識の変化があります。厚生労働省は、障害のあるなしにかかわらず、誰もが能力と適性に応じて働ける社会の実現を目指して、障害者雇用対策を総合的に進めています。


実際に、障害者雇用の規模は拡大しています。厚生労働省の令和7年集計結果では、民間企業における雇用障害者数は70万4,610.0人で過去最高を更新しました。一方で、法定雇用率達成企業の割合は46.0%にとどまっており、採用数が増えている一方で、企業ごとの対応にはまだ差がある状況です。


こうした現状から見えてくるのは、障がい者の採用が一部の企業だけのテーマではなく、多くの企業にとって現実的な経営課題になっているという点です。特に中小企業では、採用ノウハウの不足や、社内に相談できる担当者が限られることから、何から始めればよいか迷いやすい傾向があります。そのため、必要なのは制度理解と実務設計をセットで進めることです。


また、障がい者雇用を進める理由は、法令遵守だけではありません。多様な人材が活躍できる職場は、業務の見える化やコミュニケーション改善が進みやすく、結果として職場全体の働きやすさ向上につながることがあります。障がい者の採用を組織運営の質を高める取り組みとして捉える視点が大切です。


法定雇用率と企業に求められる対応



2.3%


→

2.5%


→

2.7%



参考:民間企業の法定雇用率(2026年10月時点)


障がい者の採用を考える企業がまず理解すべきなのが、法定雇用率です。民間企業の法定雇用率は、2024年4月に2.3%から2.5%へ引き上げられ、2026年7月にはさらに2.7%へ引き上げられました。これに伴い、障がい者の雇用義務が生じる企業の範囲も、従業員40人以上から37.5人以上へと拡大されています。


今後も法定雇用率の見直しが検討される可能性はありますが、2026年10月時点では、民間企業の次回の引き上げ時期や具体的な雇用率は正式に決定されていません。そのため、企業には現在の法定雇用率への対応に加え、今後の制度改正の動向を確認しながら、計画的に障がい者の採用と職場環境の整備を進めることが求められます。


ポイント


さらに、法定雇用率を満たさない企業には納付金制度が設けられている一方で、障がい者雇用を進める企業向けには施設設備や雇用管理のための助成や支援策も用意されています。つまり、企業に求められるのは義務への受け身の対応ではなく、使える制度を活用しながら持続可能な採用体制をつくることです。


法定雇用率という数字だけを目標にすると、採用後のミスマッチが起こりやすくなります。企業側はでは、採用人数ではなく、本人が無理なく働き続けられるかどうかが重要で、数字と定着の両方を見る姿勢が、結果として企業にも本人にも良い成果につながります。


採用における主な課題とは


障がい者の採用で多くの企業が感じる課題は、大きく分けると三つあります。まず、どの業務が適しているかを見極めにくいことです。次に必要な配慮を採用前に把握しきれないこと。最後に採用できても長く定着するか不安があることです。これらの課題は互いに関連しており、業務内容の整理から採用後の支援体制づくりまで一体的に取り組む必要があります。


特に初めて採用を行う企業では、障がい特性を一般論だけで理解しようとしてしまいがちです。しかし実際には、同じ障がい名であっても得意なこと、苦手なこと、必要な配慮は個人差がある場合があります。そのため、診断名だけでは判断せず、具体的な業務内容と働き方に照らし合わせて考える必要があります。厚生労働省も、本人の希望、能力、適性に応じた支援を重視しています。


また、採用課題の一部は応募者側だけの問題ではありません。求人票が曖昧である、現場が受入準備をしていない、相談体制がないといった企業側の設計不足によって、ミスマッチが起こることも少なくありません。企業が情報を言語化し、受入体制を整えることが、障がい者採用を円滑に進める重要なポイントです。


業務適性の見極め


業務適性を見極める際に重要なのは、職種名ではなく作業内容を細かく見ることです。たとえば「事務職」と一口にいっても、データ入力が中心なのか、電話応対が多いのか、来客対応があるのかで必要な力は大きく変わります。障がい者の採用では、業務を作業単位で分け、必要なスキルや負担の程度を整理することで応募者の適性を判断しやすくなります。


業務適性の確認では、面接だけで判断しないことも大切です。厚生労働省が案内する就労支援の枠組みでは、本人の希望や適性に合った選択を支援するために就労アセスメント(障害のある方を採用する際、働く能力、長所、課題、適性を客観的に評価するプロセス)の手法が活用されています。企業側も、見学や実習、支援機関からの情報共有を通じて、実際の業務との相性を確認するとミスマッチを減らしやすくなります。


適性の見極めで避けたいのは、「障がいがあるからこの仕事は難しい」と一律に判断することです。重要なのは、どの条件なら力を発揮しやすいかを把握することです。業務量、指示方法、通勤負担、静かな環境の必要性などを具体的に見ることで、採用の判断精度は高まりやすくなります。


配慮事項の把握の難しさ


採用前に障がい者への必要な配慮をすべて把握することは難しい場合が多いです。特に本人がまだ働いた経験が少ない場合には、自分に合う配慮を言語化しにくいことがあります。厚生労働省の合理的配慮の考え方でも、本人が具体的な措置内容を細かく示せない場合があることを前提に、支障となっている事情を整理しながら対応を考える姿勢が重要とされています。


ポイント


そのため、企業側は「必要な配慮を全部教えてください」と求めるのではなく、「どのような場面で困りやすいか」「どういう指示だと理解しやすいか」といった具体的な聞き方をする必要があります。たとえば、口頭指示より文字のほうが理解しやすい、業務の優先順位が明確なほうが安心できる、定期通院のため勤務調整が必要など、実務場面に落とし込むことで確認しやすくなります。


また、配慮事項は採用前にすべて決め切るものではなく、就業後に見直していく前提で考えることも大切です。働き始めてから見えてくる課題もあるため、採用時にすべての配慮事項を決めるのではなく入社後も本人と相談しながら見直していくことが大切です。


定着への不安


企業側が最も不安を抱きやすいのが、採用後の定着です。実際に、採用できたとしても、業務負荷が高すぎる、相談先が分からない、職場理解が不足しているなどの要因が重なると、早期離職につながることがあります。厚生労働省は、就労定着支援や職場適応援助を含む就労支援策を案内しており、採用後の伴走支援を重視しています。


JEEDのジョブコーチ支援でも、新たに就職する際だけでなく、雇用後の職場適応支援が行われています。ジョブコーチは本人だけでなく、事業主や職場の従業員にも助言を行い、職務の再設計や職場環境の改善を提案する仕組みです。つまり、定着は本人の努力だけに任せるものではありません。企業側の運用と外部支援を活用することで、改善が期待できる課題です。


ポイント


定着不安を減らすには、採用時点で完成形を求めすぎないことです。最初は業務を絞り、面談を重ね、少しずつ業務範囲を広げるほうが、結果的に安定しやすいことがあります。


採用成功の基準を「入社させること」ではなく「無理なく働き続けられること」に置く視点が必要です。定期的な面談や業務の見直し、支援機関との連携を継続することで、企業と本人の双方にとって働きやすい環境づくりにつながります。


障がい者の採用方法|具体的な進め方とポイント


障がい者の採用方法|具体的な進め方とポイントを説明するイメージ画像


採用までの基本的な流れ


採用の流れは、募集、応募、面接、採用という一般的なフローの中で進みます。ただし実務上は、その前段階として受入部署の整理、業務の切り出し、想定される配慮の確認、支援機関との連携準備が重要です。これらを省略すると、求人票の内容が曖昧になり、面接でも必要な確認ができず、入社後の混乱が起こりやすくなります。


基本的な流れとしては、まず社内で任せる業務と必要条件を整理します。次に、求人票を作成し、ハローワークや支援機関を通じて応募者を募ります。その後、書類選考や面接、を実施し、必要に応じて職場見学や実習を行います。応募者の適性や支援体制などを確認したうえで、採用を判断します。厚生労働省は、職業紹介や職場適応援助などを組み合わせた支援を案内しており、企業が単独で抱え込まない進め方を後押ししています。


ここで大切なのは、採用活動を人事部門だけで閉じないことです。実際に受け入れる現場管理者、必要に応じて産業保健スタッフ、外部支援機関など、複数の関係者が早い段階から関わるほうが、現実的な採用設計ができます。しかし書類審査だけで完結するものではなく、社内外の連携を含めた運用設計が必要です。


求人作成時のポイント





  • 仕事内容:実際に行う仕事の内容

  • 勤務時間・勤務地:残業の有無、勤務地の変更があるかどうか

  • 勤務方法:在勤か在宅勤務かどうか

  • 相談窓口:社内で相談窓口があるか、産業医などの有無




求人作成では、応募数を増やすこと以上に、ミスマッチを減らすことが重要です。障がい者の採用では、仕事内容や勤務条件が曖昧な求人ほど、応募者も企業も判断がしにくくなります。実際の仕事内容や勤務条件を正確に伝えるこが、本人が安心して長く働くことにつながります。


求人票には、仕事内容、勤務時間、勤務地、残業の有無、電話対応の有無、在宅勤務の可否、通院配慮の相談可否、相談窓口の有無などをできるだけ具体的に記載するとよいです。こうした情報が明確になると、応募者は自分に合うかを判断しやすくなり、面接でも配慮事項のすり合わせが進みやすくなります。


ポイント


また、障がい者雇用においては、求人票が企業の受入姿勢を示す資料にもなります。何を任せたいのか、どこまで配慮を検討できるのか、どのような働き方を想定しているのかを明らかにすることで、応募者との信頼関係づくりにもつながります。


業務内容の明確化


業務内容は、「事務全般」や「軽作業全般」のような大きな表現だけで済ませないことが大切です。たとえば、データ入力、書類のファイリング、郵便物の仕分け、請求書チェック、備品管理、電話応対の有無など、実際の作業単位で示すことで、応募者は働くイメージを持ちやすくなります。


この明確化は、単に応募者のためだけではありません。企業側にとっても、どの業務なら任せやすいか、どの作業にどの程度の集中力や対人対応が必要かを整理する機会になります。障がい者採用がうまくいかない企業では、そもそも受け入れる業務が曖昧なケースが少なくありません。仕事の切り出しができるほど、採用後の配置や教育も進めやすくなります。


さらに、繁忙期の変動、業務の優先順位変更の頻度、他部署との連携の多さなども、必要に応じて示したほうが実務的です。仕事内容の透明性が高いほど、採用後の認識のずれを減らしやすくなります。


必要な配慮の整理


求人作成の段階で、企業側が対応可能な配慮を整理しておくことも重要です。合理的配慮は、本人の申出と企業側の検討を通じて具体化されるものですが、あらかじめ何ができるかを社内で整理しておくと、面接時のやり取りがスムーズになります。厚生労働省は、雇用分野における合理的配慮の提供を事業主の義務として示しています。


たとえば、口頭指示に加えてメモを渡す、定期的な面談を設定する、通院日の勤務調整を相談できる、休憩場所を確保する、業務量を段階的に増やすなどは、比較的検討しやすい配慮です。一方で、何でも対応できると約束することは望ましくありません。大切なのは、業務遂行上必要で、かつ企業にとって過重な負担にならない範囲を明確にすることです。


ポイント


配慮の整理は、採用の可否を判断するためだけでなく、現場に負担をかけないためにも必要です。曖昧なまま採用すると、現場で混乱が起きたり本人との認識差が大きくなったりしやすいため、事前に共通理解を持っておくことが重要です。


面接で確認すべきポイント


面接では、障がいの内容そのものを細かく聞くことよりも、仕事を進める上で必要な情報を確認することが基本です。厚生労働省は、雇用分野における障害者差別の禁止と合理的配慮の提供を求めています。そのため、面接では障がいを理由に応募者を一律に排除せず、適性や能力を客観的に評価するとともに、業務に関係のない不必要な質問を避けることが重要です。


確認したいのは、業務遂行に影響する条件です。たとえば、どのような環境なら集中しやすいか、どの程度の勤務時間が安定しやすいか、通院との両立はどう考えているか、どのような指示だと理解しやすいか、といった点です。これらは評価のためだけでなく、採用後の調整に必要な情報でもあります。


面接では、応募者の経験とスキルを確認する質問と必要な配慮や働き方の希望を確認する質問を分けると進めやすくなります。経験や対応できることを確認する質問と、働く上での条件を確認する質問を混同しないことで、応募者も答えやすくなります。また、必要に応じて支援機関から補足説明を受ける方法も有効です。ただし、支援機関との情報共有は本人の同意が必要なので事前に打ち合わせをしておくと良いでしょう。


体調管理と通院状況


体調管理や通院状況の確認は、採用可否を単純に決めるためではなく、勤務設計に必要な情報として扱うべきです。たとえば、定期通院の曜日、体調が崩れやすい要因、疲労がたまりやすい働き方などを把握できると、勤務時間や業務量の調整を考えやすくなります。


ただし、診断名や治療内容を必要以上に深掘りするのは慎重であるべきです。企業が知るべきなのは、医療情報そのものというより、業務上の留意点です。採用活動では、本人のプライバシーに配慮しつつ、働くうえで必要な情報を確認する姿勢が大切です。


通院があることをマイナスに捉えないことも重要です。継続的に通院し、体調管理の仕組みを持っていることは、むしろ安定就労につながる場合があります。働き方の安定性という視点で捉えることが大切です。


配慮事項と働き方の希望


面接では、本人が必要とする配慮や希望する働き方を具体的に確認することが重要です。たとえば、短時間勤務から始めたいのか、フルタイムを想定しているのか、電話応対の頻度はどの程度なら対応しやすいのか、静かな場所が必要なのかなど、実務に結びつく形で確認することで整理しやすくなります。


ポイント


ここで大切なのは、本人の希望を聞くだけでなく、企業側が対応できる範囲も率直に伝えることです。たとえば、勤務時間の調整は可能でも在宅勤務は難しい、電話応対は少ないがゼロではない、定期面談はできるが専任支援員は置けないなど、現実的な条件を共有することが信頼につながります。


障がい者の採用では、面接を選抜の場だけでなく相互確認の場として捉えることが効果的です。採用前に期待値をすり合わせることで、入社後の不信感や戸惑いを減らしやすくなります。


採用判断で重視すべき視点


採用判断で重視すべきなのは、障がいの有無そのものではなく、その業務、その職場、その支援体制の中で継続して働ける可能性です。障がい者の採用では、一般的な能力評価だけでなく、合理的配慮を受けた状態で実力を発揮できるかを考える必要があります。これは特別扱いではなく、合理的配慮を前提とした適切な評価といえます。


また、採用判断は人事部門だけで完結させず、現場責任者や必要に応じて外部支援機関とも情報を共有しながら進めるほうが現実的です。特に初めて採用活動を行う企業では、受入部署の理解度やフォロー体制が、採用後の定着に強く影響します。


ポイント


採用成功の基準を「内定を出したかどうか」ではなく、「数か月後も安定して働けているかどうか」に置くと、判断の軸がぶれにくくなります。


採用時点で完璧な適応を求めすぎないことも大切です。成長や調整の余地も含めて評価する姿勢を持つことで、企業と本人の双方にとって無理のない採用につながります。


障がい者雇用を支える支援と連携方法


障がい者雇用を支える支援と連携方法を説明するイメージ画像


活用できる支援機関とは


重要なことは企業だけで採用から定着までを抱え込まないことです。厚生労働省やJEEDは、ハローワーク、就労移行支援事業所、地域障害者職業センターなどの支援機関を案内しており、それぞれが異なる役割を担っています。


これらの支援機関は、応募者紹介だけを行うわけではありません。本人の適性整理、職業準備、実習調整、就職後のフォロー、ジョブコーチ支援など、採用前後を通じて関わることがあります。企業にとっては、採用実務の負担を軽減できるだけでなく、第三者の視点を得られることにも大きな価値があります。


特に障がい者の採用に慣れていない企業では、支援機関の存在が判断の助けになります。社内だけで考えると不安が大きくなりやすい場面でも、支援機関と連携することで実行可能な対応へ落とし込みやすくなります。


ハローワーク


ハローワークは、採用活動における最も基本的な公的窓口の一つです。厚生労働省は、障害者雇用対策の中で職業紹介や各種支援を位置づけており、企業は求人のの申し込み、採用条件の相談、応募者紹介などの支援を受けられます。


障害者専門の窓口が設けられている地域では、企業側の不安や疑問に応じて、よりきめ細かな相談が可能な場合があります。たとえば、どのような求人票にすべきか、採用時にどのような配慮を検討すべきか、他の支援機関とどう連携すべきかなど、実務に近い相談がしやすいです。


ポイント


初めて障がい者の採用を行う企業は、まずハローワークで相談し、全体像を整理する進め方が現実的です。制度や窓口が分からないまま独自に動くより、基本の公的窓口につながることで進めやすくなります。


就労移行支援事業所


就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障がい者に対し、一定期間、就労に必要な知識や能力の向上のための訓練を行うサービスです。厚生労働省は、就労移行支援を就労系障害福祉サービスの一つとして位置づけています。


企業にとってのメリットは、訓練を経た人材と接点を持ちやすいことです。事業所によっては、パソコン訓練、ビジネスマナー、コミュニケーション練習、面接対策、職場実習などを行っており、本人の得意なことや苦手なことがある程度整理された状態で採用につながることがあります。


また、採用前だけでなく、採用後の定着支援に関わることもあります。本人が自分の特性を企業へうまく伝えにくい場合でも、支援者が補足することで相互理解が進みやすくなります。このように、就労移行支援事業所は障がい者採用では、本人と企業の相互理解を促し、円滑な採用につなげる働きを持っています。


地域障害者職業センター


地域障害者職業センターは、JEEDが運営する職業リハビリテーションの中核的な支援機関です。JEEDは、障害者の職業的自立の推進のため、事業主や障害者に対して総合的な支援を行っています。


地域障害者職業センターでは、職業評価、職業準備支援、職場適応援助などにつながることがあり、企業が職場定着に課題を感じている場合の相談先として有効です。特に、採用前に適性を丁寧に確認したい場合や、採用後の職場適応に不安がある場合に活用しやすい支援機関です。


ポイント


ジョブコーチ支援はその代表例で、職場に出向いて本人、事業主、従業員に対して直接支援を行います。必要に応じて職務の再設計や職場環境の改善提案も行われるため、現場で起きている課題を具体的に調整しやすい仕組みです。


支援機関と連携するメリット


支援機関と連携する最大のメリットは、企業が推測だけで判断せずに、客観的に判断できることです。応募者の自己申告だけでは見えにくい点があり、企業もどのように配慮すべきか迷いやすい場面があります。その際、支援機関が入ることで本人の得意不得意や過去の訓練状況、実習時の様子などを多面的に把握しやすくなります。


また、採用後に不調やミスマッチが起きた場合も、外部支援者がいると課題の切り分けがしやすくなります。業務量の問題なのか、指示方法の問題なのか、生活面の負担なのかを整理し、本人と企業の双方が冷静に対処しやすくなります。これは早期離職の予防にもつながります。


ポイント


さらに、支援機関との連携は、企業内に障がい者雇用の経験やノウハウが蓄積する点でも有益です。一人ひとりの対応を通じて、業務の見える化や面談の進め方、配慮の考え方が整理され、次の採用にも活かしやすくなります。企業内の知見として積み重ねていく視点が重要です。


採用後のフォロー体制の作り方



 STEP 1 支援担当者と相談窓口を明確にする

 STEP 2 定期的な面談で業務状況や困りごとを確認する

 STEP 3 業務内容や配慮事項を見直し、支援体制を改善する


採用後のフォロー体制では、まず社内の担当者を明確にすることが基本です。現場上司、人事担当、必要に応じて支援機関との連絡役など、誰がどの役割を担うかを決めておくと、相談先があいまいになりにくくなります。


次に、定期面談の頻度と確認項目を決めておくことが重要です。採用初期は週1回や隔週など短い間隔で、業務量、疲労感、通院との両立、困りごとの有無、配慮の見直しなどを確認するとよいです。障がい者の採用では、問題が起こるのを待つのではなく、定期的に状況を確認する仕組みが必要です。


加えて、社内だけで解決しようとしないことも大切です。厚生労働省は就労定着支援を含む就労系障害福祉サービスを案内しており、JEEDのジョブコーチ支援も雇用後の職場適応支援を対象としています。採用後のフォローは企業単独の努力だけに頼らず、制度や支援を活用することで、より持続しやすい体制を構築できます。


障がい者の定着を実現するための取り組み


障がい者の定着を実現するための取り組みを説明するイメージ画像


定着が難しい理由と対策


障がい者の職場定着が難しくなる理由は一つではありません。業務負荷が高すぎる、仕事内容が曖昧、相談先が分からない、通院や生活リズムとの両立が難しい、職場の理解が不足しているなど、複数の要因が重なることで離職リスクが高まりやすくなります。だからこそ、定着対策は一つの制度導入だけでは不十分で、日々の運用改善が重要です。


定着を促すには、入社直後からの過度な業務負担をかけなことが大事です。最初から多くの業務を任せるより、段階的に習熟度を見ながら仕事の範囲を広げるほうが安定しやすくなります。また、定期面談や支援機関との連携を組み込んでおくことで、小さな違和感の段階で調整しやすくなります。厚生労働省とJEEDの支援策は、こうした職場適応や定着の支援を前提に設計されています。


ポイント


定着が難しい理由を本人の努力不足に還元しないことも重要です。離職の背景には、企業側の業務設計やコミュニケーション不足が影響している場合もあります。どこに負荷が集中しているかを丁寧に見直すことで、改善できることは少なくありません。


職場で必要な配慮とは


職場で必要な配慮は、障がい種別や個人の特性、業務内容によって異なりますが、一般的には業務量、指示方法、休憩、勤務時間、相談体制に関する工夫が中心になります。厚生労働省は、合理的配慮を過重な負担にならない範囲で提供する義務があると示しています。


ここで大切なのは、配慮を特別扱いではなく、働きやすくするための業務調整として考えることです。たとえば、指示をメモで補う、優先順位を明示する、面談の場を設ける、勤務時間を調整するなどは、職場全体の働きやすさ改善にもつながることがあります。


また、配慮は一度決めて終わりではありません。働き始めてから見直しが必要になることもありますし、慣れてくることで不要になる配慮もあります。固定化せず、状況に応じて更新していく姿勢が実務的です。


業務量・業務内容の調整


業務量と業務内容の調整は、定着支援の基本です。障がい者の採用では、作業そのものより、急な変更、複数業務の同時進行、締切の重なりなどが大きな負担になることがあります。そのため、入社初期は業務範囲を絞り、優先順位を明確にすることが有効です。習熟度を見ながら徐々に業務を広げる方法が適しています。


また、繁忙期の負荷のかけ方にも注意が必要です。通常時には問題なく働けていても、業務量が急増すると体調や集中力に影響する場合があります。企業側が「できる範囲」と「今はまだ広げないほうがよい範囲」を見極めることが、長期的な戦力化につながります。本人が安定して成果を出せる条件を整えることで、ミスや離職の防止につながります。


コミュニケーションの工夫


コミュニケーションの工夫では、曖昧さを減らすことが重要です。指示を口頭だけにしない、要点をメモやチャットで残す、確認のタイミングを決める、変更があるときは早めに共有するなどの対応は、障がい者の採用に限らず有効です。


特に、優先順位や、完了基準、困ったことの相談先などが不明確だと不安や混乱につながることもあります。採用活動においては、本人だけに期待をするのではなく、職場側も伝え方を変えたり調整をすることで改善につながる場合があります。


ポイント


注意や指摘をするときは、人格評価のような伝え方は避け、事実と改善点を分けて伝えることが大切です。具体的なフィードバックのほうが、次にどう行動すればよいかが分かりやすく、今後の改善につながりやすくなります。


休憩・勤務時間の柔軟性


休憩や勤務時間の柔軟性は、障がい者の定着に大きく関わることがあります。たとえば、通院のための勤務調整、短時間勤務からのスタート、混雑を避ける時差出勤、必要時に静かな場所で休める体制などは、実務上検討されやすい配慮です。


厚生労働省の合理的配慮の考え方に沿えば、こうした調整は個別事情と職場の実情を踏まえて検討することになります。すべてを認める必要があるわけではありませんが、就業継続に有効な工夫があるなら、まずは検討の土台にのせることが重要です。


特に採用初期は、フルタイムにこだわりすぎないことも大切です。安定して働ける形を優先するほうが、結果として職場定着につながることがあります。長く働ける条件を見つける視点が必要です。


継続的な支援と面談の重要性


継続的な支援と面談は、障がい者の採用を成功へ近づけるために欠かせない取り組みです。採用時には問題がなく見えても、業務内容の変化、季節的な体調変動、職場内の人間関係などによって、負担のかかり方は変わります。そのため、入社後も定期的に状況を確認し、配慮や業務を見直す仕組みが必要です。


面談では、「問題はありますか」と漠然と聞くだけでは不十分なことがあります。業務量は適切か、睡眠や通院との両立はできているか、指示の受け方に困りごとはないか、今の配慮は合っているかなど、具体的に確認したほうが状況を把握しやすくなります。小さな違和感を早めに拾うことが、離職予防につながります。


ポイント


さらに、支援機関との連携を継続することで、社内だけでは判断しにくい課題にも対応しやすくなります。JEEDのジョブコーチ支援は、雇用後の職場適応も対象としており、本人だけでなく企業側への助言も行います。本人、企業、支援機関が継続的に対話できる状態をつくることが、障がい者の採用を定着につなげる重要なポイントです。安定した職場定着につながります。


まとめ


企業は、法定雇用率への対応だけでなく、業務内容の明確化、合理的配慮の整理、採用後の定着支援までを一体で考えることが重要です。厚生労働省は、民間企業に2.5%の法定雇用率を課しており、2026年7月には2.7%へ引き上げられました。一方で、障害者差別の禁止や合理的配慮の提供義務も示しており、企業には採用実務と雇用管理の両面での対応が求められています。


また、障がい者の採用は企業だけで完結させる必要はありません。ハローワーク、就労移行支援事業所、地域障害者職業センター、ジョブコーチ支援などを活用することで、採用前の適性確認から採用後の定着支援まで、外部の専門的なサポートを受けやすくなります。


実務上もっとも大切なのは、障がい者を一律に捉えないことです。障がい名ではなく、具体的な業務、必要な配慮、働き方の希望を丁寧に確認し、段階的な受け入れと継続的なフォローを行うことで、採用と定着の両方を進めやすくなります。障がい者採用を「雇うこと」で終わらせず、「活躍できる仕組みづくり」として捉えることが、企業にとっても本人にとっても持続可能な雇用につながります。




更新情報


初回公開:2026年08月06日


最終更新:2026年10月14日




この記事で扱ったテーマ



障がい者採用の流れ


職場で必要な配慮


支援と面談の重要性





障害者向け スカウト型求人サイト「フォーキャリー」


障害者向け スカウト型求人サイト「フォーキャリー」の画像
「3分でカンタン! ご登録はこちら」フォーキャリー無料登録への案内画像

フォーキャリーは、障がいを持つあなたが自分らしく働くことを叶える、障がい者採用専門の求人サービスです。あなたの長所や経験、そして障がいの特性によって必要な配慮を企業に知ってもらうことで、自分らしい働き方を実現できる企業からスカウトを受け取ることができます。


スカウトを受け取り、さまざまな業界や職種を知ることで、あなたのキャリアの可能性を更に広げられます。どんな企業からスカウトが届くのか、見てみませんか。無料登録は3分程度で手軽にできるので、まずは登録するところから始めてみてはいかがでしょうか?



この記事の関連記事

障がい者割引の使い方|手帳・ETC申請が分かる

  障害者割引は、障害者手帳があればどこでも同じ条件で利用…

  障害者割引は、障害者手帳があればどこでも同じ条件で利用…

障害年金の請求方法|初診日と受給条件を解説

  障害年金を請求するには、初診日や受給条件、加入していた…

  障害年金を請求するには、初診日や受給条件、加入していた…

ADHDの仕事選び|特性に合う働き方と支援

ADHDの仕事選びでは、特性だけで向いている職種を決めるので…

ADHDの仕事選びでは、特性だけで向いている職種を決めるので…

「安定」か「キャリアアップ」か?障害者雇用の未来を広げる選択肢

障害者雇用で働くうえで、安定して長く働くことと、キャリアアッ…

障害者雇用で働くうえで、安定して長く働くことと、キャリアアッ…

「向いている仕事」より「続けられる仕事」を考える

仕事が続かない原因を自己分析する 仕事を始めても長く続かな…

仕事が続かない原因を自己分析する 仕事を始めても長く続かな…

復職後の働き方で意識したいこと|安定して働き続けるためのポイント

復職後は、休職前と同じ働き方に戻すのではなく、体調や業務への…

復職後は、休職前と同じ働き方に戻すのではなく、体調や業務への…

障がい者の採用方法とは?定着までのポイントを解説

  障がい者採用を成功させるには、採用活動だけでなく、業務…

  障がい者採用を成功させるには、採用活動だけでなく、業務…

障害者が手に職をつける方法|支援と資格取得を解説

  障害者が手に職をつけるためには、自分の特性を整理し、利…

  障害者が手に職をつけるためには、自分の特性を整理し、利…

新着記事

障がい者割引の使い方|手帳・ETC申請が分かる

  障害者割引は、障害者手帳があればどこでも同じ条件で利用…

障害年金の請求方法|初診日と受給条件を解説

  障害年金を請求するには、初診日や受給条件、加入していた…

ADHDの仕事選び|特性に合う働き方と支援

ADHDの仕事選びでは、特性だけで向いている職種を決めるので…

「安定」か「キャリアアップ」か?障害者雇用の未来を広げる選択肢

障害者雇用で働くうえで、安定して長く働くことと、キャリアアッ…

「向いている仕事」より「続けられる仕事」を考える

仕事が続かない原因を自己分析する 仕事を始めても長く続かな…

復職後の働き方で意識したいこと|安定して働き続けるためのポイント

復職後は、休職前と同じ働き方に戻すのではなく、体調や業務への…

障がい者の採用方法とは?定着までのポイントを解説

  障がい者採用を成功させるには、採用活動だけでなく、業務…

障害者が手に職をつける方法|支援と資格取得を解説

  障害者が手に職をつけるためには、自分の特性を整理し、利…

精神障害のある人の仕事と就職|定着するための支援と理解

  精神障害のある人が自分に合った仕事を選び、長く働き続け…

発達障害の人の仕事支援とは?働き方と支援制度

  発達障害のある人が仕事を探し、働き続けるためには、特性…

人気記事ランキング

この求人情報をお気に入りに保存する お気に入りから削除する この求人に応募する 求人の詳細をみる